高額療養費制度負担上限引き上げに対する共同声明
2025年3月7日
特定非営利活動法人 日本食道学会
理事長 竹内 裕也
一般社団法人 食道がんサバイバーズシェアリングス
代表理事 高木 健二郎
現在、国会を中心に、公的保険制度における高額療養費制度の負担上限引き上げが検討されています。高齢化や、医療費の増加に伴い、財政負担が拡大する中で、世界的にも優れた国民皆保険制度を維持するためには、医療費の抑制や健康保険組合の保険料負担の軽減が必要性とされています。一方で、がん治療のように、長期的な治療を必要とする患者にとっては、負担増が過大となる可能性があることも指摘されています。
こうした状況の中、全国がん患者団体連合会や日本難病・疾病団体協議会の反対の声を受け、政府は修正案として「多数回該当据え置き」を提示しました。これにより、長期療養を要する患者の負担は一定程度軽減されることになりました。しかしながら、依然として政府案の引き上げ幅は大きく、がん患者にとって過重な金銭的負担が生じ、がん治療の継続的な実施に、深刻な影響を及ぼすことが懸念されます。
食道がんの患者は、手術や放射線治療に加え、再発治療のための薬物療法などを長期に継続する必要があります。負担上限の引き上げが実施されると、経済的理由により必要な薬物療法の継続が困難となる患者が増え、高額な治療の選択を控えるケースが想定されます。経済的理由により必要な薬物療法の継続が困難となり、その結果、適切な治療を受ける機会が失われてしまう可能性があります。
医療費抑制および健康保険料負担の軽減を図る上で、高額療養費制度負担上限引き上げのみならず、わが国における医療制度ならびに社会保障制度全体のあり方について、抜本的な議論を行うことが不可欠です。患者団体、医療従事者、専門家の意見を広く収集し、公平かつ持続可能な制度設計を検討すべきものであると考えます。
ここに、日本食道学会と、食道がんサバイバーズシェアリングスは共同で、政府案の見直しと、がん患者の経済的負担を軽減するための議論の継続を求め、声明を公開します。